ドキュメント

カタユウレイボヤの発生段階

Developmental Stages in Ciona
CirobuD:0000001
胚発生以前
CirobuD:0000002
ステージ
特徴
Time after fertilization
St.0
未受精卵
放卵された未受精卵
-
胚発生、変態以前
CirobuD:0000003
I. 受精卵 Zygote period (0-1.0hr)
ステージ
特徴
Time after fertilization
St. 1
受精卵
接合体, 受精卵
24min (0.4hpf)
II. 卵割期 Cleavage period (1.0-4.5hr)
ステージ
特徴
Time after fertilization
St. 2
2細胞
2細胞胚
55min (0.9hpf)
St. 3
4細胞
4細胞胚
1hr 27min (1.45hpf)
St. 4
8細胞
8細胞胚
1hr 54min (1.9hpf)
St. 5a
16細胞前期
16細胞胚の前期
2hr 21min (2.35hpf)
St. 5b
16細胞後期
16細胞胚の後期
2hr 39min (2.65hpf)
St. 6a
32細胞前期
32細胞胚の前期
3hr (3hpf)
St. 6b
32細胞後期
32細胞胚の後期
3hr 12min (3.2hpf)
St. 7
44細胞
44細胞胚。胚の植物半球が丸みを帯びる。
3hr 21min (3.35hpf)
St. 8
64細胞
64細胞胚。胚は上方向から見ると四角い形になる。B7.4割球が隆起している。
4hr (4hpf)
St. 9
76細胞
76細胞胚。胚の植物半球は平坦である。
4hr 12min (4.2hpf)
III. 原腸胚期 Gastrula Period (4.5-6.3hr)
ステージ
特徴
Time after fertilization
St. 10
110細胞
A7.1割球の頂端収縮を伴い、原腸陥入が開始する。
4hr 33min (4.5hpf)
St. 11
初期原腸胚
脊索が陥入していく。胚の植物半球が蹄鉄のような形状になる。
4hr 54min (4.9hpf)
St. 12
中期原腸胚
神経板の割球が6列に配置される。原口はまだ胚の中央に位置し、開いたままである。
5hr 39min (5.65hpf)
St. 13
後期原腸胚
原口は胚の後方に位置しており、ほとんど閉鎖している。胚は前後軸方向に伸長している。神経板は6列以上になり、A系列の神経割球列(I and II)がカーブし始める(神経管形成開始)。
5hr 55min (5.9hpf)
IV. 神経胚期 Neurula Period (6.3-8.5hr)
ステージ
特徴
Time after fertilization
St. 14
初期神経胚
A系列の神経板がb6.5割球の娘細胞によって並ばせられ、溝を形成する。胚はひし形になる。溝は閉じ切っていない。
6hr 21min (6.35hpf)
St. 15
中期神経胚
神経管がほぼすべて形成される。胚は楕円形になる。A系列の神経板も溝を形成する。
6hr 48min (6.8hpf)
St. 16
後期神経胚
神経管が後方の領域でも形成されはじめる。胚は前後軸方向に伸長していく。
7hr 24min (7.4hpf)
V. 尾芽胚期 Tailbud Period (8.5-17.5hr)
ステージ
特徴
Time after fertilization
St. 17
初期尾芽胚 I
体幹部と尾部が分離する最初の兆候があらわれる。尾部は曲がっておらず、体幹部と同程度の長さである。どの脊索細胞もインターカレーション(細胞挿入)が終了していない。
8hr 27min (8.45hpf)
St. 18
初期尾芽胚 II
尾部は体幹部からはっきりと区別できるようになる。尾部と体幹部はまだ同程度の長さである。A系列細胞の神経管形成によってあいた神経孔はまだ開いたままである。
8hr 50min (8.8hpf)
St. 19
前期尾芽胚 I
尾部は腹側に約40°ほど曲がり、体幹部よりも少し長くなる。少数の脊索細胞がインターカレーションしはじめ、直線状に並んでいく。
9hr 19min (9.3hpf)
St. 20
前期尾芽胚 II
神経孔が閉じ、神経管形成が完了する。尾部は約60°に曲がる。
9hr 30min (9.5hpf)
St. 21
中期尾芽胚 I
尾部は体幹部の1.5倍の長さになり、腹側に約90°曲がっている。脊索細胞のインターカレーションが完了する。
10hr 2min (10hpf)
St. 22
中期尾芽胚 II
胚の形が半円状をえがく。尾部は体幹部の2倍の長さになる。
10hr 54min (10.9hpf)
St. 23
後期尾芽胚 I
平衡点の色素沈着が始まる。尾部は強く湾曲しており、尾部の先端が体幹部前方に近づいている。
11hr 54min (11.9hpf)
St. 24
後期尾芽胚 II
脊索細胞の液胞化が始まる。胚の前端に付着器が生じ始める。尾部は曲がりが緩和して直線状になる。
13hr 27min (13.5hpf)
St. 25
後期尾芽胚 III
眼点にメラニンが沈着する。すべての脊索細胞が液胞化する。尾部は背側に曲がりを生じる。
15hr 54min (15.9hpf)
VI. 幼生 Larva Period (St.26~29, 17.5~24hpf)*
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St. 26 CirobuD:0000049
孵化幼生
卵殻をやぶって孵化する。体幹部は球状に近い形をしている。付着器の突起は未成熟でピラミッド型である。尾は不規則な動きをする。
17hr 30min (17.5hpf)
Stage0
St. 26
St. 27 CirobuD:0000050
前期遊泳幼生
体幹部は紡錘形をしている。尾は規則的な動きをして遊泳しはじめる。
17.5-20 hpf
St. 27
St. 28 CirobuD:0000051
中期遊泳幼生
付着突起が伸長し、付着器の基底部が広がる。体幹部は角ばってくる。球状のテスト細胞、表皮感覚ニューロンの繊毛、口腔前葉が認識できるようになる。
20-22hpf
Stage1
St. 28
St. 29 CirobuD:0000052
後期遊泳幼生
ステージ28に比べ、体幹部はより長細い。体幹部と尾部の境界の輪郭は角ばっている。
22-24hpf
Stage2
St. 29, 30
変態 CirobuD:0000004
VII. 付着 Adhesion period (St.30, 24~27hpf)
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St. 30 CirobuD:0000053
付着
付着突起は湾曲する。眼点と平衡点の残遺物が認識できる。
24-27 hpf
Stage2
St. 31, 32
VIII. 尾部退縮 Tail absorption period (St.31~33, 27~30hpf)
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St. 31 CirobuD:0000054
尾部退縮初期
尾部の吸収が始まる。体幹部と尾部の境界で尾が屈曲する。まだ眼点と平衡点の残遺物が認識できる。
27 hpf
Stage2
St. 33
St. 32 CirobuD:0000055
尾部退縮中期
尾部の半分が体幹部に吸収される。尾は収縮して厚くなる。まだ眼点と平衡点の残遺物が認識できる。
28 hpf
St. 34
St. 33 CirobuD:0000056
尾部退縮後期
尾部は完全に体幹部に吸収される。付着突起はもう識別できない。まだ眼点と平衡点の残遺物は認識できる。
29 hpf
St. 35
IX. 体軸回転 Body axis rotation period (St.34~36, 30~60hpf)
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St. 34 CirobuD:0000057
体軸回転前期
体軸の回転が始まる(柄と内柱のなす角度が0°を超える)。外側の被嚢とキューティクル層はもはや存在せず、一部被嚢の細胞は認識できる。また眼点と平衡点の残遺物も認識できる。
30-36 hpf
Stage3a
St. 36
St. 35 CirobuD:0000058
体軸回転中期
体軸の回転が30°~60°ほどまで進行する。1対の鰓裂が認識できる。眼点と平衡点の残遺物も認識できる。
36-45 hpf
St. 37, 38
St. 36 CirobuD:0000059
体軸回転後期
体軸の回転が80°~90°ほどまで進行する。2対の鰓裂が認識できる。眼点と平衡点の残遺物も認識できる。濾過摂食の活動や心臓の拍動が見られる。
45-60 hpf
Stage3b
St. 39, 40
変態後 CirobuD:0000005
X. 幼若体 Juvenile period (St.37~41, 60hpf~)
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St. 37 CirobuD:0000060
前期幼若体 I
体軸の回転が完了する。胃が膨張する。眼点と平衡点の残遺物が認識できる。
63-72 hpf (3dpf)
Stage4
St. 41, 42
St. 38 CirobuD:0000061
前期幼若体 II
幼生の尾部の残遺物が完全に吸収される。
3-4 dpf
Stage5
St. 43, 44
St. 39 CirobuD:0000062
中期幼若体 I
さらに鰓裂が開き始める。胃や腸管、神経が目立つようになる。
4-6 dpf
St. 45
St.40 CirobuD:0000063
中期幼若体 II
Gonad in form of oval vesicle
6-7dpf
Stage6
St. 46
St.41 CirobuD:0000064
後期幼若体
心房管の融合が始まる。
7dpf~
Stage7
St. 47
XI. Young adult period
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St.42
-
2nd Ascidian Stage
-
Stage8
-
XII. Mature adult period
ステージ
特徴
Time after fertilization
Chiba's Stage (2004)
ANISEED (2017)
St.43
-
生殖巣が十分に成熟する。
-
Adult
-

*幼生が遊泳しはじめてから付着するまでの期間は個体によって広く異なります。
**Matsunobu et al. (2015) は孵化幼生が変態能を得るには少なくとも3~4時間が必要であることを示しました。
※この発生段階表はStage 1~26について Hotta et al.,2007 にもとづいて作成されています。また、Stage 27~37については Hotta et al.,2020 にもとづいて作成されています。


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発生段階早見表(4ページバージョン)
発生段階早見表(2ページバージョン)

実験手順

生物材料との準備

タイムラプスイメージングおよび共焦点走査型レーザー顕微鏡観察用の、カタユウレイボヤ(C. robusta)成体は東京湾または舞鶴湾産のもので、NBPRから提供されました。組織学に用いたカタユウレイボヤ成体はイタリア ベニスで入手しました。生物種の識別は後期幼生の識別因子である体幹部の形状を確認することで行った(Pennati et al., 2015)。異なる場所で採取された標本は、解剖学的・発生学的に同じ特徴を有していた。

タイムラプスイメージング

卵および精子は解剖によって生殖管から直接採取した。授精後、卵はアガロースコートシャーレに、50 µg/mLストレプトマイシン硫酸塩を添加した濾過海水とともに入れた。初期卵割は均一に同期された(データは掲載していません)。温度を安定に保つためにペルチェ方式インキュベーター(CN-25B、三菱電機)を使用した。胚どうしが融合することを防ぐために、振動機能のないものを用いている。胚は受精後、約18時間後に孵化幼生まで発生が進行した。 コリオンあり卵から自然に孵化した幼生を、20°Cのサーモプレート上のプラスチックシャーレ内に保持して画像を取得した。顕微鏡に装着したデジタルカメラ(SP-350、オリンパス)を用いて、3~10分間隔で7日間にわたり画像を撮影した(動画S4)。受精3日後に餌を与えた(植物性プランクトン、太陽光培養)。

組織化学と共焦点顕微鏡

受精卵から受精後7日後の幼若体まで、発生の異なるタイミングで固定標本を作製した。18°Cでインキュベーションしたサンプルを、0.1 M MOPS緩衝液でpH7.5に調整した4%パラホルムアルデヒド溶液中で、室温で30分~1日間固定した。固定後のサンプルをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で3回洗浄し、0.01% Triton X-100(PBST)を含むPBSに溶解させたAlexa 546ファロイジン(Molecular Probes、Eugene)中で4°Cで一晩、または室温で1~2時間インキュベートした。つづいてサンプルをPBSで3分間洗浄してから、スライドガラスにのせてイソプロパノールで脱水し、最後に安息香酸ベンジルとベンジルアルコールの2:1混合物であるMurray clearを用いて透明化した。Alexa 546ファロイジンは、皮質アクチンフィラメントを染色することにより、胚の細胞膜を可視化するために利用した。

画像は40倍油浸対物レンズをセットしたZeiss LSM510 METAまたはOLYMPUS fv1000の共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)を用いて撮影した。3D画像を再構成するために、サンプルごとに厚み方向に100枚の断層画像を取得した(LSM image browser、Zeiss)。焦点面の間隔はサンプルによって異なる(0.5から1.2 µm)。得られた断層画像はデータベース統合のために、連続断層画像および3D画像としてエクスポートされた。変態の時期は付着の時期によって大きな偏差が見られたが、代表的な変態過程を示すサンプルを平均的なタイミングと考えた。最後にこれらのデータをデータベースTnicAnatOに統合した。

組織学的検査

in vitroでの受精後、幼生、変態中の個体、幼若体を、1.6%のNaClを添加したpH7.4の0.2 Mカコジル酸ナトリウムで緩衝した、1.5%グルタルアルデヒドによって固定した。緩衝液で洗浄したあと、カコジル酸ナトリウムで緩衝した、1% OsO4でさらに固定した。つづいて標本を脱水し、接着剤(アラルダイト、ニチバン)に埋め込んだ。切片(1 µm)をトルイジンブルーでカウンター染色した。横断・正面・矢状切片について撮影を行った。撮影はデジタルカメラ(DFC 480、Leica)を用いた。すべての写真はCorel Draw X5でタイプセットした。

謝辞

Authors thank Yutaka Satou Lab at Kyoto University, Manabu Yoshida Lab at the University of Tokyo and Onagawa Marine Station for providing individuals of Ciona samples with support by the National Bio-Resource Project of AMED, Japan;

Akitsu Fukuzawa for collection of CLSM image stacks;

Takumi T. Shito for the construction of the flash-independent version (version 3.0) of TunicAnatO;

Paolo Burighel for the excellent comments and suggestions regarding the ontology.